「コットンフィールドカップ1999 ISAF WORLD MATCH RACE CHAMPIONSHIP」
豊崎 謙氏 提供のピザーラセーリングチーム世界選手権参戦レポートです。
ピザーラセーリングチーム、世界選手権3連覇を狙いデンマーク入り
1999年8月16日デンマーク・スコウスフーブド発
宅配ピザチェーン「PIZZA−LA」を展開する株式会社フォーシーズ(本社:東京都港
区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッショナル・ヨットチーム「ピザーラセーリング
チーム(PST)」は、8月15日夜、レース会場のデンマーク・スコウスフーブド(コンペ
ンハーゲン近郊)に到着した。
今年の「コットンフィールドカップ1999」は世界選手権となっており、大会名の後に
「ISAF WORLD MATCH RACE CHAMPIONSHIP」のタイトルがつづく。マッチレース世界選手権では
97年(スウェーデン)、98年(日本)と3連覇しているPST。今回はディフェンディン
グチャンピオンとして、そして史上初の三連覇を狙っての参加となる。
16日午前中、強風の中で練習が始まった。短い風下・風上コースを何度も周回し、レース
艇のチューニング、ボートスピードのチェック、それぞれの動作、そしてクルー間の連携動作
の確認をする。練習とはいえ他艇が近づくと熱くなるピーター・ギルモア。ときには大声でク
ルーたちに指示を出し、艇上は真剣そのもの。体重測定を夕刻に控えているクルーたちは朝か
ら何も食べておらず、練習が終った時にはさすがにぐったりとした様子。陸へ上がっての開口
一番は「腹が減った!」
参加選手
世界選手権はマッチレース世界ランキングのトップ10のセイラーが戦う。
参加選手は以下のとおり。
ピーター・ギルモア(ピザーラセーリングチーム、日本、マッチレース世界ランキング1位)
アメリカズカップに挑戦するニッポンチャレンジ所属
ステン・モア(デンマーク、マッチレース世界ランキング3位)
バートランド・パシェ(仏、同4位)、アメリカズカップに挑戦するテレコム・トランシェル所属
ディーン・バーカー(ニュージーランド、同5位) アメリカズカップを防衛するチーム・ニ
ュージーランド所属
マーカス・ウイザー(独、同6位)
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン、同7位)
モートン・ヘンリクソン(デンマーク、同8位)
ヤスパー・バンク(デンマーク、同9位)
クリス・ロウ(英、同10位)
ヨハン・シューマン(独、同11位)、アメリカズカップに挑戦するスイスチーム所属
(*ランキングは6月30日現在。ランキング2位の選手が参加しないため、11位のヨハン
・シューマンが繰り上げ参加となっている)
レース概要
大会名称/コットンフィールドカップ1999 ISAF WORLD MATCH RACECHAMPIONSHIP
開催場所/デンマーク・スコウスフーブドハーバー
主催/ロイヤル・デイニッシュ・ヨットクラブ、スコウスフーブド・ヨットクラブ
期間/1999年8月16日から22日
参加/10チーム
賞金総額/DKK85万(デンマーク・クローネ)
レース使用艇/DSマッチレーサー(全長11.25m、5人乗り)
レース方式/
予選 10チームで総当たり戦を2回行う。
準決勝 予選1位のチームが、予選2位、3位、4位の中から準決勝の対戦相手を選び
対戦する。そして、残る2チームが対戦する。
決勝 準決勝のそれぞれ1位が決勝で対戦し、先に3勝したチームが優勝。
PST今日の様子
午前中の強風の練習でヘトヘトになり、空腹になったPST。しかし、夕方6時の体重測定
まではちゃんとした食事がとれない。自分たちの体重を早くチェックしようと、運営スタッフ
を手伝って体重計を所定の位置まで運び込み、全員が試しにハカリに乗る。その結果、クルー
合計体重上限の437.5kgをわずか500g上回ったのみで、一安心。そこで軽い昼食と
なったのだが、それでもサンドイッチをひとかじりだけ。他のチームがきれいにたいらげるの
を横目で見ながら、あとはグッと我慢。午後のプロアマ・レースに3人が乗り込んだ後、残っ
た2人は宿舎にもどってトレーニングで汗を流す。この努力のおかげで6時の測定は436k
gで一発クリア。直後にビールをゴクリといっぱい。しかし、いつもながら重量級PSTは体
重では苦労する。
体重があると強風のレースではヨットが安定し有利だ。しかも、この海域の情報をあまり持
たないPSTにとっては、細かな風の変化を拾わねばならない弱風レースよりも、ボートスピ
ードで勝負する展開になったほうが勝機は増すはず。昨年のこのレースでは微風で苦労した経
験があるだけに、今日の強風がレース期間を通じて吹いてくれればと願うPSTクルーたちだ。
PST、本番を明日に控え
ディーン・バーカー相手に実戦さながらの練習
1999年8月17日デンマーク・スコウスフーブド発
宅配ピザチェーン「PIZZA−LA」を展開する株式会社フォーシーズ(本社:東京都港
区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッショナル・ヨットチーム「ピザーラセーリング
チーム(PST)」は、明日から本番を控えた8月17日、若手ナンバー1スキッパーのディ
ーン・バーカー相手にたっぷりと練習を行った。
この日は昨日とは打って変わって南からの微風コンディション。朝一番にハーバーに顔を出
したPSTはさっそくレース艇に乗り込み朝練を開始。昨日の強風下での帆走練習とは違い、
さらに細かなクルーワークの確認を何度も行う一方、ボートスピードのチェックに余念がなか
った。
練習後半では、今大会の最年少スキッパーで若手ナンバー1のディーン・バーカーを相手に
実戦さながらの練習を行う。スタート前の操船、スタートのポジション取り、スタート直後の
スピードアップ、コースの読み、マーク回航の手順、スピンアップなどなど、短いコースを引
いてミニレースを繰り返しながら様々な練習を行った。
午後には恒例のスポンサーを招待したプロアマ・レースが行なわれ、夜はコペンハーゲン市
長の招待によるオープニング・セレモニーが開催された。明日からのスタートを控え、
コペンハーゲン・スコウスフーブドは世界選手権前夜の緊張した雰囲気に包まれてきた。
昨日もお知らせしたように世界選手権はマッチレース世界ランキングのトップ10のセイラ
ーが戦う。ちなみにランキングは過去2年に参加したレースから1年に4つのレース、計8レ
ースを対象にして計算される。昨日の情報に加え、参加スキッパーのデータの追記を下記に。
ピーター・ギルモア(ピザーラセーリングチーム、日本)
マッチレース世界ランキング1位。ランキング計算の対象となった8レースのうち7レースで
1位、残る1レースが3位という高い勝率を誇る。97年、98年と2年連続のマッチレース
世界チャンピオン。アメリカズカップに挑戦するニッポンチャレンジのセーリング・ディレク
ター兼スキッパー。昨年のコットンフィールドカップ優勝。今年はスウェディシュマッチカッ
プ(7月)に優勝しており、知名度ナンバー1。
ステン・モア(デンマーク)
同3位。デンマーク選手としてはマッチレース世界ランキングで過去最高の位置につけている
。今年のACIカップ(クロアチア)で優勝し、その他のレースで2位4回、3位3回をとっ
ている。
バートランド・パシェ(仏)
同4位。過去5年間、世界ランキング10以内に必ず入っている。1位2回、2位3回、3位
2回、4位1回。アメリカズカップに挑戦するテレコム・トランシェルに所属。
ディーン・バーカー(ニュージーランド)
同5位。26歳で今大会最年少スキッパー。アメリカズカップを防衛するチーム・ニュージー
ランド所属。この2年で驚異的にランキングをアップさせてきた。1位2回、2位3回、
3位1回、4位2回。
マーカス・ウイザー(独)
同6位。マッチレースのドイツ・チャンピオン。今年のコングレショナルカップ(米)
で2位に入っている。1位2回、2位4回、4位2回。
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン)
同7位。彼にとっては6度目の世界選手権参加。今年のオーストラリアカップ2位、ACIカ
ップ3位、スウェディッシュマッチカップ4位。この他に1位2回、3位1回、4位2回。
モートン・ヘンリクソン(デンマーク)
同8位。今年のレミントンカップ(英)に優勝し、このところメキメキと頭角をあらわしてい
る。上記の他に1位4回、2位1回、5位2回。
ヤスパー・バンク(デンマーク)
同9位。様々なクラスで実績のあるベテランセイラー。過去2度の五輪メダリストとなってお
り、シドニー五輪でもソリングクラスの代表選手になったばかり。1位3回、2位2回、3位
2回、4位1回。
クリス・ロウ(英)
同10位。今年前半は他のレースに集中したためランキングは下がっているが、98年には7
つのマッチレースで決勝戦まで進出し、4つに優勝する快進撃を見せた。その他に2位2回、
3位1回、5位1回。
ヨハン・シューマン(独)
同11位。アメリカズカップに挑戦するスイスチーム所属。過去3度の五輪メダリスト。シド
ニー大会も代表になる可能性が大。1位5回、2位2回、3位1回。ランキング2位の選手が
参加しないため、11位のシューマンが繰り上げ参加となっている。
(*ランキングは6月30日現在)
PST今日の様子
昨日夕刻の体重計測が終了すると、減量解禁とばかり中華料理店へ直行したPST。コース
料理、さらにいくつかの追加注文をあっさりとたいらげ、ようやくお腹が落ち着いた様子。今
朝、試みに計ったPSTの体重は全員で10kgも増えていた。
PST、まさかの連敗スタート
予想外の2勝4敗で初日を終える
1999年8月18日デンマーク・スコウスフーブド発
宅配ピザチェーン「PIZZA−LA」を展開する株式会社フォーシーズ(本社:東京都港区南
青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッショナル・ヨットチーム「ピザーラセーリングチーム(
PST)」は、マッチレース世界選手権「コットンフィールドカップ1999」の初日を迎えた。し
かし、世界チャンピオンのPSTにとって、よもやの2勝4敗という成績でスタートすることになっ
た。
時にどしゃ降りの雨となった昨日の天候とは変わり、今日は久々に朝から太陽が顔を出す快適な
日。南からの微風だ。
世界選手権の開幕第1レースを飾ったのはPST対金メダル3個を持つ男ヨハン・シューマン(
独)戦。直線コースのスピードには定評のある走り屋だ。スタートで左海面を選んだシューマン、ス
ピードに乗り最初のミーティングでPSTをリード。その後、この差が挽回できず、シューマンの艇
速に脱帽といった形でPST敗退。
つづくクリス・ロウ(英)戦も今ひとつスピードが出し切れず、PSTが連敗。ちょっといつも
と違うな、というPSTだ。3戦目、五輪メダリストのヤスパー・バンク(デンマーク)が相手。
スタートで少し出遅れ、なかなか相手を捉えられないPST。写真を撮ろうと近づくプレスボートに向
って、「もう少し離れてくれ」と手を振るピーターの姿に苛立ちが見える。結果、このレースにも敗
れ、PST予想外の3連敗となった。
4戦目は地元のモートン・ヘンリクソン(デンマーク)戦。数学と体育を教える教師だが、この
2年間はヨットレースに集中するため休職中。地元の海面をよく知るモートンの走りは素晴らしく、
第3レグ前半まではPSTをリード。しかし、フォアステイ・トラブルに見舞われ途中リタイア。
PST辛うじて初勝利を上げる。
しかし、5戦目のステン・モア(デンマーク)ではスタートから出遅れ、終始、ステンの後塵を
拝し4敗目を喫する。
PSTらしいレースを見たのは、この日の最終戦となったディーン・バーカー(ニュージーラン
ド)との戦いだった。スタート前に相手にペナルティを与え、スタートも完璧に制し、つけいる隙を
与えずフィニッシュ。世界チャンピオンの走りが戻ってきたかのようで、明日からはこの不調を脱し
てくれると感じさせる内容だった。
明日は1回目の総当たり戦の残り、そして2回目の総当たり戦の前半が行なわれる予定。
本日の結果
バートランド・パシェ(仏) 7ポイント
ステン・モア(デンマーク) 5ポイント
ヤスパー・バンク(デンマーク) 4ポイント
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン) 4ポイント
ディーン・バーカー(ニュージーランド) 3.5ポイント
クリス・ロウ(英) 3ポイント
ピーター・ギルモア(PST、日) 2ポイント
モートン・ヘンリクソン(デンマーク) 1ポイント
マーカス・ウイザー(独) 1ポイント
ヨハン・シューマン(独) 1ポイント
(1勝につき1ポイントが与えられる。ディーン・バーカーはペナルティを与えられ
0.5ポイント減)
本日のPST
レース後の記者会見で「今日の調子は?」とコメントを求められたピーター・ギルモア。ちょっと困
った顔を一瞬見せたが、「日本人は優しい国民性なので、初日は地元のデンマークの選手に勝っても
らった。モートン戦は相手のヨットにトラブルが起っちゃったけれどね」と答え、会場の喝采を浴び
ていた。
調子がもどったPST
本日3勝で4位に浮上!
1999年8月19日デンマーク・スコウスフーブド発
株式会社フォーシーズ(本社:東京都港区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッシ
ョナル・ヨットチーム「ピザーラセーリングチーム(PST)」は、マッチレース世界選手権
「コットンフィールドカップ1999」の2日目を迎え、3勝1敗として通算成績で4位に上
がった。
昨日は暗かった。PSTの雰囲気が。レース会場で出される食事もとらず、早々と宿舎に引
き上げた。3連敗でスタートし、結果2勝4敗。この2年ほどの世界サーキット転戦でPST
が3連敗したことは一度もなかった。それだけに、ショックは大きい。クルーの脇永が「すべ
てが分からない。どうなっているんだ」と言うほどだ。
深夜に雨が降り始め、早朝はどしゃ降り。ますます雰囲気は暗くなり、光明は何も見えなか
った、朝までは。しかし、PSTがハーバーに着く頃にはその雨も上がり、薄日がさす。何と
かなりそう、そんな雰囲気だった。
緒戦はマーカス・ウイザー(独)。しかし、スタート直前、風上・風下の位置関係でPST
が風下のマーカスに接触。これでPSTがペナルティを受ける。しかも、スタートはPSTが
リコール(陸上競技のフライングのようなもの)。スタートライン内側にいったんもどって、
再スタート。これで大幅に出遅れ、このレースは決まり。PSTが5敗目を喫した。
しかし、次のマグナス・ホーンバーグ(スウェーデン)戦でようやくPSTらしい走りがも
どってきた。スタートは互角だったものの、わずかにリードしたPSTは第3レグで左の風を
つかみ一気にリードを広げた。ここで勝負あり。3勝目を獲得。
そして、1回目の総当たり戦最後の相手となったバートランド・パシェ(仏)戦は秀逸だっ
た。スタート直前にPSTがペナルティを受け、第2マークまではパシェ先行。しかし、第3
マーク直前で左のいい風をつかんだPSTは、右に突っ込んだパシェを大逆転。しかも最後の
マークを回ってスピンを上げてからのPSTの艇速はすばらしく、フィニッシュライン直線で
ペナルティ解消のターンを行ってなお、わずかの余裕を持ちながらパシェを下した。これで1
回目の総当たり戦をすべて終え4勝を獲得。順位ではまだ7位の位置だが、レース内容が格段
によくなってきた。
つづいて2回目の総当たり戦に突入。対戦相手はヨハン・シューマン(独)。アメリカズカ
ップに挑戦するスイスチームのスキッパー候補だ。スタートからしばらくはシューマンが先行
したが、第1レグ途中で右の風を見つけたPSTがそれを確実につかみ、逆転。第1マークを
先行し、そのまま確実にリードを守り切りシューマンを下した。
これで通算5勝を獲得し、第1、第2の総当たり戦を通しての総合ポイントで4位まで浮上
したPST。最終的に4位に入れば、準決勝進出の権利を手にできる。いつもの笑顔がクルー
の間にもどってきた。
明日は2回目の総当たり戦の残りが行なわれる予定。
1回目の総当たり戦の最終結果
バートランド・パシェ(仏) 8ポイント
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン) 6ポイント
ステン・モア(デンマーク) 6ポイント
ヤスパー・バンク(デンマーク) 4.75ポイント
クリス・ロウ(英) 4ポイント
マーカス・ウイザー(独) 4ポイント
ピーター・ギルモア(PST、日) 4ポイント
ディーン・バーカー(ニュージーランド) 3.5ポイント
ヨハン・シューマン(独) 2ポイント
モートン・ヘンリクソン(デンマーク) 1.75ポイント
2回目の総当たり戦の結果(第1レースの一部を終了した段階)
ピーター・ギルモア、ステン・モア、バートランド・パシェ、ディーン・バーカー 1ポイント。
モートン・ヘンリクソン、ヤスパー・バンク、クリス・ロウ、ヨハン・シューマン 0ポイント。
マーカス・ウイザー、マグナス・ホーンバーグは未レース。
総当たり戦の通算成績
バートランド・パシェ(仏) 9ポイント
ステン・モア(デンマーク) 7ポイント
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン) 6ポイント
ピーター・ギルモア(PST、日) 5ポイント
ヤスパー・バンク(デンマーク) 4.75ポイント
ディーン・バーカー(ニュージーランド) 4.5ポイント
クリス・ロウ(英) 4ポイント
マーカス・ウイザー(独) 4ポイント
ヨハン・シューマン(独) 2ポイント
モートン・ヘンリクソン(デンマーク) 1.75ポイント
今日のPST
「ようやく海面が読めるようになってきました」と脇永達也。「これでシナリオどおりですね
」と冗談めかすのは早福和彦。谷路泰博は大きな身体に力をみなぎらせ「これからだ」と一言
。気になるのは兵藤和行が風邪気味で調子を落としていること。昼食の後も横になっている。
ピーター・ギルモアは地元メディアのひっきりなしの取材を見事に次々とこなしていく。いつ
ものリズムがPSTにもどってきた。
信じられない!
PST、全勝でトップに躍り出る!!
1999年8月20日デンマーク・スコウスフーブド発
株式会社フォーシーズ(本社:東京都港区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッシ
ョナル・ヨットチーム「ピザーラセーリングチーム(PST)」は、マッチレース世界選手権
「コットンフィールドカップ1999」3日目を迎え、今日のレースを6戦全勝とし、一挙に
トップに躍り出た。
信じられないカムバックだ。
クリス・ロウ(英)、ヤスパー・バンク(デンマーク)、バートランド・パシェ(仏)、モ
ートン・ヘンリクソン(デンマーク)、マーカス・ウイザー(独)、そしてディーン・バーカ
ー(ニュージーランド)の6人をことごとく破っての全勝だ。
中でもタフなレースはバンクとバーカーの戦いだった。
ヤスパー・バンク戦はスタート直後に2艇がずっと左海面へ我慢の走りくらべ。ジリジリす
るほどの接戦が5分近くつづく。しかし、後にピーター・ギルモアが言うように、「潮流、風
の吹き所の読みが難しい」海面でPSTはいち早く右の強い風をつかみ、第1上マークを先行
。その後のスピンランの走り比べても競り合いがつづくが、ラフィングマッチをしかけてバン
クにペナルティ。これで精神的に優位に立ったが、最後の上りでさらにいい風をつかみ、上マ
ークのアプローチも強い潮流を計算に入れて芸術的なほどコースに乗る。これで勝負がついた
。フィニッシュ後、「いいレースだったでしょ」と脇永が言うように接戦を展開しながらも、
優れた判断と自信あふれる走りでモノにした快心のレースだった。
この勝利で一気に自分たちを取り戻したPST。一昨日までのもたつきが嘘のように彼らは
変わった。
パシェ戦ではスタートから優位に立ち、接戦ながらも「必ず勝つ」という確信を持ちながら
レースを展開し、勝利をもぎとった。ここまでトップを驀進していたパシェに2連勝したこと
は大きな意味を持つ。
そしてディーン・バーカー戦。スタートが悪く、第1上マーク5艇身差で遅れをとる。今日
の連勝もこれまでかと思わせた。しかし、第3レグで右から吹き込む絶好の風をとらえて最終
マーク直前で大逆転! プレスボートの記者から思わず「信じられない!」という言葉が出る
ほど素晴らしい走りだった。その後、バーカーはなすすべなし。このレースでPSTは今日の
ゲームを6戦全勝で終えることとなった。
この結果、PSTは総当たり戦の1回目、2回目を通しての通算成績でトップに躍り出た。
PSTが陸上に上がってくるや、多くの人々が彼らを取り囲み、「よくやった」と口々に声を
かけていた。
明日は総当たり戦の残りと準決勝戦が行なわれる予定。
今日までの通算成績 総当たり戦(1) 総当たり戦(2) 総合
1位/ピーター・ギルモア(PST、日) 4点 7点 11点
2位/バートランド・パシェ(仏) 8点 3点 11点
3位/ステン・モア(デンマーク) 6点 4点 10点
4位/ヤスパー・バンク(デンマーク) 4.75点 5点 9.75点
5位/マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン) 6点 3点 9点
6位/ディーン・バーカー(ニュージーランド)3.5点 5点 8.5点
7位/クリス・ロウ(英) 4点 3点 7点
8位/マーカス・ウイザー(独) 4点 2点 6点
9位/モートン・ヘンリクソン(デンマーク)1.75点 2点 3.75点
10位/ヨハン・シューマン(独) 2点 1点 3点
(ピーター・ギルモアとバートランド・パシェは同点だが、直接対決でギルモアが勝っている
ため1位となる)
今日のPST
すべての記者から出た質問「初日と今日はどこがどう違うのか?」。これに明確に応えるのは
選手といえども難しいだろう。「調子が出てきた」では誰も納得しないところ。しかし、初日
はヨットのセッティングが明らかに違っていたことは確か。2日目の朝、ブームバングのポジ
ションを修正し、マスト上部のテンションを強めると走りが変ってきたのだから。しかし、そ
れよりも重要な要素としてクルーの谷路泰博はこう説明する。「マッチレースはその海域の癖
をいかに早くつかむかがポイントの一つなんです。どっちから風が吹いてくるのか、その強さ
には規則的な変化があるのか。潮流はどれだけ強く、どっち方向へ流れていて、それが午前と
午後でどう変るのか。波の影響はどうか。波が出てきたらセイルのセッティングをどう変える
のか。そういったことすべてが徐々にわかり始めてきたのが変化と言えば変化でしょう」。お
よそ30分ほどで1レースが終わり、それが次から次へと繰り返されるヨットのマッチレース
。レース海面の特徴をいかに早く正確につかむかが勝負の鍵を握り、PSTはそれをようやく
つかみ始めたというわけだ。
一喜一憂
PST、予選トップ通過、準決勝0勝2敗
1999年8月21日デンマーク・スコウスフーブド発
株式会社フォーシーズ(本社:東京都港区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッシ
ョナル・ヨットチーム「ピザーラセーリングチーム(PST)」は、マッチレース世界選手権
「コットンフィールドカップ1999」4日目を迎えた。昨日からつづく総当たり戦2回目の
残る2レースを全勝し、予選は1位となって準決勝進出を決めたPST。しかし、ヤスパー・
バンクとの準決勝戦は0勝2敗となり、一気に王手をかけられた。決勝進出には3勝せねばな
らず、明日3連勝しなければPSTの決勝進出はならない。
総当たり戦の2レースはいつもの強いPSTだった。
マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン)戦はスタートこそ遅れをとったものの第1上マー
クであっさりと逆転。ステン・モア(デンマーク)戦もスタートはもたつき最終レグまで先行
されていたものの、最終レグでスピンを展開しながらラフィングマッチを仕掛け、それがピタ
リと決まり大逆転。
これで2回目の総当たり戦を全勝とし、バートランド・パシェ(仏)を抜き単独1位で予選
を終えた。絶好調がつづくPSTだった。
1位のPSTは準決勝戦の相手を選ぶことができる。2位バートランド・パシェ、3位ヤス
パー・バンク(デンマーク)、4位ステン・モアからピーター・ギルモアが指名したのはバン
クだった。もう一つの対戦は残るバートランド・パシェ対ステン・モアとなった。
そして迎えた準決勝戦。先に3勝したチームが決勝に進出する。
スタートして右に向ったPSTと左に向ったヤスパー・バンク。明らかに右からいい風が入
ってきた。それをつかんだPSTが前に出て第1上マークに近づく。バンクも差を縮めつつマ
ークにアプローチ。接戦だ。しかし、マーク内側に入ったバンクに対してラフィング(風上へ
ヨットを向け)して攻撃しようとしたPSTにペナルティが与えられる。さらに次のレグでP
STが相手の航路を妨害するような位置でジャイブ(風下への方向転換)したという理由で再
度、ペナルティ。ピーターは大声でこの裁定に不満をあらわすがどうしようもない。2つのペ
ナルティを抱えたPSTは即座にペナルティ解消のターンを行わねばならず、ここで大きく遅
れを取り勝負が決した。これで1敗。
つづく第2戦。スタート時は風が極端に落ち、PSTが少し出遅れる。バンクは右へ、PS
Tは左へ。これで勝負あり。右にいい風が入り、バンクが大きくリード。その後、その差を逆
転することはできず、PST2連敗となった。
決勝に進出するにはPST、明日3連勝せねばならず、土俵際に追い込まれたPSTだ。も
うひとつの準決勝戦はバートランド・パシェがステン・モアに2連勝している。
明日は準決勝戦のつづき、そして決勝戦が行なわれる。
予選の成績 総当たり戦(1回目) 同2回目 総合
1位/ピーター・ギルモア(PST、日) 4点 9点 13点
2位/バートランド・パシェ(仏) 8点 4点 12点
3位/ヤスパー・バンク(デンマーク) 4.75点 7点 11.75点
4位/ステン・モア(デンマーク) 6点 5点 11点
5位/マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン) 6点 5点 11点
6位ディーン・バーカー(ニュージーランド) 3.5点 6点 9.5点
7位/クリス・ロウ(英) 4点 3点 7点
8位/マーカス・ウイザー(独) 4点 3点 7点
9位/モートン・ヘンリクソン(デンマーク)1.75点 2点 3.75点
10位/ヨハン・シューマン(独) 2点 1点 3点
準決勝の成績
ピーター・ギルモア(日本、PST)0勝
対
ヤスパー・バンク(デンマーク)2勝
バートランド・パシェ(仏)2勝
対
ステン・モア(デンマーク)2敗
本日のPST
総当たり戦の2回目を全勝で終え1位になったPSTは絶好調かと見えたが、分からないも
のだ。初日の2勝4敗という出来から見れば確実に調子を取り戻したはずなのだが、そうでは
なかった。まさに一喜一憂といったところ。
準決勝の相手を選ぶのも難しい判断だった。2位のパシェには2連勝しているが、3人の中
では最も手強い。ステン・モアとヤスパー・バンクは地元とあってこのレース海面の癖を知り
尽くしている。しかもPSTは1回目の総当たり戦ではどちらにも負けており、2回目ではど
ちらにも勝っている。あとはフィーリングと言うしかない。そんな中、ギルモアはヤスパー・
バンクを選び、結果として2連敗となった。予選終了直後、「準決勝は別のレースが始る」と
語ったピーターだが、明日は再び新しい別のレースを展開するつもりで3連勝を狙いに行くは
ずだ。
PST、世界選手権3位
優勝は地元ヤスパー・バンク
1999年8月22日デンマーク・スコウスフーブド発
株式会社フォーシーズ(本社:東京都港区南青山 社長:浅野秀則)所属のプロフェッシ
ョナル・ヨットチーム「ピザーラセーリングチーム(PST)」は、マッチレース世界選手権
「コットンフィールドカップ1999」最終日(5日目)を迎えた。その結果、ヤスパー・バ
ンクとの準決勝戦でPSTは1敗し、決勝進出はならなかった。
つづく3位、4位決定戦でPSTはステン・モアと対戦し、1勝0敗として3位を確保した。
昨日からつづく準決勝戦は朝一番で行なわれた。昨日の段階で0勝2敗という瀬戸際に追い
込まれたPSTは、今日、3連勝せねば決勝へ進出することができない。地元ヤスパー・バン
ク(デンマーク)はレース海面に詳しいという強味に加えて、徐々に調子を上げてきており手
強い相手だ。岸壁から見守る観客たちの大きな声援も彼を後押しする。
スタートで少し出遅れたPSTは、バンクが右へ出たのを見て左海面を選んだ。レース前の
ゲームプランでは、右の海面もいいが、周期的に変る風の変化は左にも入ってくるという判断
もあったからだ。我慢して右の海面を走り仕掛けどころを見つけるのも手だが、PSTは左を
選択した。
しかし、マッチレースは先行した者が強味を発揮する。右の海面に左よりもわずかに勢いの
ある風が吹き込むとバンクが距離を伸ばす。最初のミーティングでバンクが前に出た。その後
、第1上マークでバンクが先行したときは3艇身ほどの差。しかし、その差が縮まらない。風
は弱い。徐々に差が広がるように見える。その後のマーク回航もすべてバンクが先行し、PS
Tは準決勝で3敗目を喫した。この結果、バンクが3勝0敗とし、PSTの決勝進出はならな
かった。
もう一方の準決勝戦では、バートランド・パシェ(仏)がステン・モア(デンマーク)を破り、
3勝0敗で決勝進出を決めた。その結果、PSTの3位、4位決定戦の相手はステン・モア、
そして1位、2位決定戦はバンク対パシェとなった。
相変わらず風がない。風待ちがつづく。最終日はタイムリミットの午後4時を過ぎればレー
スは行わないとあらかじめ定められている。そのタイムリミット直前に準備信号が上がった。
つまりこの1レースのみですべての勝敗が決するということだ。
PST、スタートで若干遅れをとる。最初のミーティングでわずかステン・モアの後ろを通
過。風は相変わらず弱い。総体重で上回るPSTには不利な微風だ。徐々に差が広がってくる。
しかし、最後の上マークではかなり接近し、マークを回航する直前にPSTはステン・モア
を逆転。午後に方向の変わった潮流の影響、一瞬PSTに入った風、ピーターのハンドリング
の巧みさなどが融合し、PSTはモアを抜き去った。この1勝でPSTは3位、4位決定戦に
勝ち、3位を確保した。
優勝決定戦も同様に1レースのみの戦いとなった。
ヤスパー・バンクとバートランド・パシェは全コースを通じて激しい接戦を演じたが、PS
Tを準決勝で破り上り調子のバンクがパシェを下し、マッチレース世界選手権初めての優勝を
飾った。オリンピック金メダルに加えて、バンクは大きな実績をひとつ加えることになった。
最終結果
1位/ヤスパー・バンク(デンマーク)
2位/バートランド・パシェ(仏)
3位/ピーター・ギルモア(PST、日)
4位/ステン・モア(デンマーク)
5位/マグナス・ホーンバーグ(スウェーデン)
6位/マーカス・ウイザー(独)
7位/ディーン・バーカー(ニュージーランド)
8位/クリス・ロウ(英)
9位/モートン・ヘンリクソン(デンマーク)
10位/ヨハン・シューマン(独)
最終日のPST
朝から張り詰めた雰囲気のPST。昨日、準決勝でヤスパー・バンクに2連敗しているだけ
に、もう後はない。昨日の最終レースは風向が大幅に変わり、公平を期するためにレースのや
り直しをした方がよかったのでは、という意見もあった。そのレースで敗れただけにPSTに
とっては不運な部分があった。しかしそれを口にせず、クルーからは「今日は日曜日なので礼
拝に行って神頼みでもしてみましょうか」「銀行(バンク)に借金2つを返したいなぁ」など
といつもどおりのジョークが飛び出す。しかし、さすがはいつものようには弾まない。
結果、準決勝では敗れたものの、3位、4位決定戦では逆境を最終マークで跳ね返し逆転し
たのはさすがPSTだ。
この後、ニッポンチャレンジのスキッパーであるピーター・ギルモアとチームの中核をなす
4人のクルーたちはアメリカズカップへ向けてモードを切り替える。今回PSTが2連勝で下
したバートランド・パシェ、7位のディーン・バーカー、10位のヨハン・シューマンなども
同様だ。99年世界選手権を終え、マッチレースの世界はしばらくアメリカズカップの話題に
集中することになる。そのアメリカズカップ挑戦艇選抜レースは10月18日、ニュージーラ
ンド・オークランドで開幕する。